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月収・年収の手取り額の計算方法とは?計算式や額面との違いについても解説
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毎月の給与明細を見れば、会社から支払われている「額面」より、実際に振り込まれる「手取り」の金額のほうが少なくなっていることがわかります。しかし、額面と手取り額の違いを理解している人は、意外と少ないかもしれません。
この記事では、ファイナンシャルプランナー・藤井亜也さん監修のもと、手取り額の計算方法など、会社員の人が知っておくべき額面と手取り額の基礎知識について解説します。
- コラムサマリ
● そもそも「額面」と「手取り額」の違いは?
・ 額面とは会社から支給される報酬の総額
・手取り額とは額面から税金や社会保険料を差し引いた金額
● 手取り額の計算方法は?
・控除の計算方法㈰所得税
・控除の計算方法㈪住民税の計算方法
・控除の計算方法㈫社会保険料
● 簡単に手取り額を計算する方法もある
・月収を基準とする手取り額シミュレーション
・年収を基準とする手取り額シミュレーション
● ボーナスの手取り額の計算方法は?
・ボーナスから差し引かれる税金や社会保険料は?
● 年金の手取り額の計算方法は?
・年金から差し引かれる税金や社会保険料は?
● 額面と手取り額の関係を理解し、今後のライフプランに役立てよう
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そもそも「額面」と「手取り額」の違いは?
毎月会社から振り込まれる報酬は、いわゆる「手取り」の金額です。対して、会社が支給する報酬の総額を「額面」と呼びます。それぞれの違いについて詳しく解説しましょう。
額面とは会社から支給される報酬の総額
額面とは、会社が支給する報酬の総額を指す言葉です。通常は、ベースとなる「基本給」に「通勤手当(交通費)」や「時間外手当(残業手当)」といった各種の手当をプラスした金額になります。一般的な給与明細では、「総支給金額」欄に記載されている金額が額面に相当します。
〈表〉額面に含まれる代表的な手当の例
時間外手当 法定労働時間または、会社で決めた労働時間を超えて働いた場合に加算される手当 通勤手当 通勤にかかる費用を補助する手当 役職手当 管理職などの役職に応じて支給される手当 家族手当 扶養家族がいる社員に対して支給される手当 住宅手当 家賃や住宅ローンなどを補助するために支給される手当 資格手当 会社で定めた資格を持つ人に対して支給される手当 手取り額とは額面から税金や社会保険料を差し引いた金額
手取り額とは、額面から所得税や住民税、社会保険料などが天引きされた金額のことです。一般的な給与明細では「差引支給額」欄に記載されている金額が手取り額に相当します。ちなみに、額面から税金や社会保険料を差し引かれることなどを「控除」と呼びます。
〈表〉額面から天引きされる代表的な控除の例
所得税 所得のある人が納める税金。毎月の給与から概算の金額が天引きされる。年末調整または確定申告で、納めすぎた金額が清算・還付される場合もある。 住民税 1月1日時点で住んでいる都道府県、市区町村に納める税金。 健康保険料 健康保険の保険料。会社員の場合、通常は算出された保険料を会社と社員が半額ずつ負担する。 厚生年金保険料 厚生年金の保険料。通常は算出された保険料を会社と社員が半額ずつ負担する。 雇用保険料 失業時に手当が受け取れるようになる、雇用保険の保険料。 介護保険料 介護保険制度の財源に使われる保険料。会社員の場合、通常は算出された保険料を会社と社員が半額ずつ負担する。 手取り額の計算方法は?
手取り額と額面の関係を簡単にまとめると、以下の計算式で表現することができます。
手取り額=額面(基本給+諸手当)−控除(税金+社会保険料) つまり、控除の計算方法がわかれば、自分でも手取り額の計算ができるわけです。以下に、額面の年収を例にした計算方法をご紹介しましょう。
控除の計算方法①所得税
所得税額を求める計算式は、以下のとおりです。
■所得税額を求める計算式
所得税額=課税所得額×税率−各種所得控除額 まずは「課税所得額」を算出します。課税所得額は、年間の給与所得額から給与所得控除額などを差し引いて求めます。給与所得控除額は収入によって異なり、令和4年分の給与所得控除額は、以下のとおりです。
〈表〉令和4年分の給与所得控除額1)
給与などの収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額 1,625,000円まで 550,000円 1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額×40%ー100,000円 1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円 3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円 6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円 8,500,001円以上 1,950,000円(上限) たとえば、年収が400万円の場合の給与所得控除額は、「年収×20%+44万円」で124万円になります。また、一般的に社会保険料は年収の約15%の割合で給料から差し引かれるため、以下の計算例では控除額を60万円として試算します。また、基礎控除は年収が2,400万円以下の場合は48万円になります2)。
課税所得額を求める計算式は、以下のとおりです。
■課税所得額を求める計算式
課税所得額=総所得額−各種所得控除額 例)年収400万円の場合の計算式
400万円ー(給与所得控除〈124万円〉+社会保険料控除〈60万円〉+基礎控除〈48万円〉) つまり、年収400万円の場合の課税所得額は、168万円となります。
続いて課税所得額を用いて所得税率と税額控除額を求めます。令和4年分(平成27年分以後)の所得税率と税額控除額は、以下のとおりです。
〈表〉令和4年分(平成27年分以後)の所得税率と税額控除額3)
課税所得金額 税率 控除額 1,000円から194万9,000円まで 5% 0円 195万円から329万9,000円まで 10% 9万7,500円 330万円から694万9,000円まで 20% 42万7,500円 695万円から899万9,000円まで 23% 63万6,000円 900万円から1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円 1,800万円から3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円 4,000万円以上 45% 479万6,000円 課税所得額が168万円の場合、所得税率は5%で、控除額は0円となります。所得税額を求める計算式は、
■所得税額を求める計算式
所得税額=課税所得額×税率−税額控除額 ですから「168万円×5%−0円」となり、年収400万円の所得税額は、年額で8万4,000円となります。
なお、2037年までの間は所得税の2.1%にあたる金額を「復興特別所得税」として、別途納付することになっています4)。上記の場合なら、所得税の8万4,000円に加え、1,764円の復興特別所得税を納めることになります。
参考資料
1)国税庁「給与所得控除」
2)国税庁「基礎控除」
3)国税庁「所得税の税率」
4)国税庁「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」
控除の計算方法②住民税の計算方法
住民税は、お住まいの市区町村によって金額に多少の差が出るものの、基本的な計算方法は同じです。
住民税額は収入に応じて課税される「所得割」と、一定以上の所得がある場合に均等に課税される「均等割」があり、その2つの合計額が住民税の金額となります。計算式は以下のとおりです。
■住民税額を求める計算式
住民税額=所得割額+均等割額 所得割は、課税所得額に税率10%(市区町村税・道府県民税・都民税含む)を掛けた上で、各種控除を差し引く形で算出します5)。なお、住民税の基礎控除は所得にかかわらず43万円です。一方、均等割は通常5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)と定められています。
たとえば、年収400万円で給与所得控除が124万円、社会保険料控除が60万円の場合、所得割と均等割は以下のとおりです。
例)年収400万円の場合の計算式
所得割:(400万円−124万円−43万円−60万円)×10% =17万3,000円
均等割:5,000円
つまり、年収400万円の場合の住民税は、単純計算で年額17万8,000円となります。ただし、年収の金額によって控除の割合が変化するほか、「調整控除」という制度が適用されるなど、わずかな金額ですが住民税にも復興特別税が加算されるため、実際の税額はこの金額と異なる点にご注意ください。
参考資料
5)総務省「個人住民税」
控除の計算方法③社会保険料
勤務先の所在都道府県によって異なりますが、社会保険料の割合は年収によって大きな変動はありません。前述の「所得税」でも触れましたが、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険などを含めた社会保険料は、年収の約15%にあたります。
つまり、世帯年収400万円の場合は60万円と考えることができます。
標準報酬月額の等級1〜32の場合、厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、会社負担分を除く9.15%が、毎月の給与から天引きされます。
また、健康保険料率は勤務先の所在都道府県によって異なります。たとえば東京都6)では、介護保険第2号被保険者に該当しない場合は9.81%、介護保険第2号被保険者に該当する場合は11.45%となります。なお、健康保険料も会社と折半されるため、この半分を個人が負担することになります。
参考資料
6)全国健康保険協会「令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」
簡単に手取り額を計算する方法もある
手取り額の詳しい計算方法をご紹介しましたが、税金や社会保険料の計算方法は複雑なものが多いことに加え、扶養家族の有無などの条件によって計算方法が変わります。
そもそも、給与明細の「控除」欄を確認すれば、税金や社会保険料の控除額がわかるわけですから、あえて自分で計算する必要はないともいえるでしょう。
とはいえ給与明細が手元にない場合や、将来希望する月収や年収から手取り額をイメージしたい場合などもあると思います。
そこで覚えておくと便利なのが、額面からおおよその手取り額を導き出す計算式です。一般的な会社勤めの場合、「額面のおよそ75%〜85%」が手取り額になるとされています。つまり、以下の計算式を使えば、額面からおおよその手取り額が計算できるわけです。
おおよその手取り額=額面×0.75〜0.85
想定される月収や年収から、おおまかな手取り額を知りたいのであれば、こちらの計算式を使うことをおすすめします。
月収を基準とする手取り額シミュレーション
ここでは、先述した簡単な手取り額の計算方法を使った、月収の額面を基準とする手取り額のシミュレーションをご紹介します。まずは20代前半で多く見られる月収(額面)に対する金額とともに、早見表もご紹介します。
●月収(額面)が18万円の場合
基本給に諸手当をプラスした月収の額面が18万円の場合に導き出される手取り額は、
18万円×0.75〜0.85=13万5,000〜15万3,000円 ●月収(額面)が20万円の場合
基本給に諸手当をプラスした月収の額面が20万円の場合に導き出される手取り額は、
20万円×0.75〜0.85=15万〜17万円 となります。
●月収(額面)が22万円の場合
基本給に諸手当をプラスした月収の額面が22万円の場合に導き出される手取り額は、
22万円×0.75〜0.85=16万5,000〜18万7,000円 となります。
参考までに、以下に月収の額面からおおよその手取り額がわかる早見表をご紹介しますので、ご参照ください。
〈表〉月収の手取り額早見表
月収の額面 おおよその毎月の手取り額 18万円 13万5,000〜15万3,000円 20万円 15万〜17万円 22万円 16万5,000〜18万7,000円 24万円 18万〜20万4,000円 26万円 19万5,000〜22万1,000円 28万円 21万〜23万8,000円 30万円 22万5,000〜25万5,000円 35万円 26万2,500〜29万7,500円 40万円 30万〜34万円 45万円 33万7,500〜38万2,500円 50万円 37万5,000〜42万5,000円 年収を基準とする手取り額シミュレーション
毎月の月収にボーナスを加えた年収の額面からおおよその手取り額を導き出すための計算式も、月収の場合と変わりません。
●年収(額面)が400万円の場合
年収の額面が400万円の場合に導き出される年間の手取り額は、
400万円×0.75〜0.85=300万〜340万円 となります。
●年収(額面)が500万円の場合
年収の額面が500万円の場合に導き出される年間の手取り額は、
500万円×0.75〜0.85=375万〜425万円 となります。
●月収(額面)が1,000万円の場合
年収の額面が1,000万円の場合に導き出される年間の手取り額は、
1,000万円×0.75〜0.85=750万〜850万円 となります。
参考までに、以下に年収の額面からおおよその手取り額がわかる早見表をご紹介しますので、ご参照ください。
〈表〉年収の手取り額早見表
年収の額面 おおよその年間手取り額 250万円 187万5,000〜212万5,000円 300万円 225万〜255万円 350万円 262万5,000〜297万5,000円 400万円 300万〜340万円 450万円 337万5,000〜382万5,000円 500万円 375万〜425万円 550万円 412万5,000〜467万5,000円 600万円 450万〜510万円 650万円 487万5,000〜552万5,000円 700万円 525万〜595万円 750万円 562万5,000〜637万5,000円 800万円 600万〜680万円 850万円 637万5,000〜722万5,000円 900万円 675万〜765万円 950万円 712万5,000〜807万5,000円 1,000万円 750万〜850万円 ボーナスの手取り額の計算方法は?
一般的に夏と冬の年2回支給されるボーナス(賞与)も給与に含まれるため、毎月支給される給与と同様に、税金や社会保険料が差し引かれます。つまり、ボーナスの手取り額も以下の計算式で導き出すことができるわけです。
ボーナスの手取り額=額面−控除(税金+社会保険料) ボーナスから差し引かれる税金や社会保険料は?
ボーナスの額面から差し引かれる控除は、以下の5つです。
〈表〉ボーナスから差し引かれる控除
税金 所得税 社会保険料 健康保険料 雇用保険料 厚生年金保険料 介護保険料 通常の給与の場合と比べ、住民税が含まれていない点に注意してください。
ボーナスのおおよその手取り額を知りたい場合は、月収や年収の場合と同様、額面の75〜85%を目安にしてもいいでしょう。
また月収や年収の場合と同様に、ネットの手取り額計算ツールを使えば、ボーナスの手取り額を簡単に計算することもできます。
年金の手取り額の計算方法は?
定期的に届くねんきん定期便には、将来受け取ることができる年金の金額が記されています。しかし、この金額も実は額面なので、実際にもらえる手取り額とは異なります。
毎月の給与やボーナスと同様、年金の手取り額も、以下の計算式で導き出すことができます。
年金の手取り額=額面−控除(税金+社会保険料) 年金から差し引かれる税金や社会保険料は?
年金から差し引かれる控除は以下の4つです。
〈表〉年金から差し引かれる控除
税金 所得税 住民税 社会保険料 国民健康保険料(75歳未満)または後期高齢者医療保険料(75歳以上) 介護保険料 このうち税金については、公的年金控除7)の対象となるため65歳未満は60万円、65歳以上は110万円以上が課税対象となります。
たとえば65歳以上で150万円の年金収入がある場合には、150万円ー110万円=40万円が課税対象となるわけです。さらに配偶者控除や基礎控除などもあるため、年金額によっては全額控除対象となる場合もあります。また、65歳以上の年金生活者で年金の受給額が158万円以下の場合、住民税は非課税となります。
社会保険料については、自治体によって計算方法が異なるため、詳しく知りたい場合はお住まいの自治体のウェブサイトを参照するか、担当部署に確認してみましょう。
このように年金の手取り額の計算方法は、年齢や年収によって細かく変わります。詳しく知りたい場合は、税理士などの専門家にご相談ください。
参考資料
7)国税庁「公的年金等の課税関係」
額面と手取り額の関係を理解し、今後のライフプランに役立てよう
ご紹介したように、額面と手取り額には大きな差があります。転職サイトなどに記載されている給与は、多くの場合額面になっているため、その金額を手取り額と考えて試算してしまうと、ライフプランにも影響が出てしまいます。額面と手取り額の違いを理解すれば、より明確なライフプランが立てられるでしょう。
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